再会のあと ( 3 / 4 )
話がひととおり終わった後、将臣は望美を呼び止めた。
「……ちょっと……話せるか?」
「うん、いいよ」
一瞬、譲はもの言いたげな顔をしたが、
「じゃあ、俺は先に部屋に戻ってます。先輩、無理しちゃだめですよ。
早く休まないと」
と言って背を向けた。
その後ろ姿を、将臣は無言で見つめる。
「将臣くん?」
「……あいつ……お前に告白でもしたか?」
「!!」
望美が真っ赤になるのを見て、将臣は少し眩しそうに笑った。
「図星か。妙に物わかりがよかったからな、今日は」
「そ、そんなこと……」
赤い顔でうつむく望美の頭に、将臣は掌を置く。
「それで?
譲に威勢良くタンカ切ったものの、具体策はな〜んにもないんだろ?」
「!!」
望美が勢いよく顔を上げた。
「ど……?!」
「『どうして?』とか聞くなよ。
ああいうお前の表情、どれだけ見てきたと思うんだ」
「……!」
「強がり言って、俺たちを励まして、でも自分でもどうしていいかわからない。
今もそうなんだろ?」
しばらく目を見張って将臣を見つめた後、望美はガクンと頭を落とした。
「……やっぱり将臣くんには、隠せないね……」
将臣は掌を望美の頬に滑らせる。
「こんなやつれた顔して……これ以上無理するなよ」
望美が頭を左右に振った。
「…………私は、いいんだよ。どうなっても。
でも、譲くんは守らなきゃいけないの。
私が盾になってでも、守らないと……!」
「ば〜か。そんなことしてあいつが喜ぶかよ」
「でも……!!」
望美の頬をつたい出した涙を、将臣は大きな手でぬぐう。
そして、潤んだ瞳を覗き込むと、柔らかく微笑んだ。
「お前も譲も助かる方法。それを考えるのが俺の役割ってとこか」
「将臣くん……?」
再び望美の頭に手を置くと、ぐしゃぐしゃとかきまぜた。
「キャ…ッ!」
「まかせておけよ。さすがにそばで助けるってわけにはいかねえ。
だが、俺は俺の場所から、お前たちを守る。
だから、お前もお前なりに頑張って、屋島から譲を無事に連れて帰れ」
「将臣くん……」
半べそで見上げる望美に、二カッと笑いかける。
「ま、今の時点で具体策がないのは俺も同じだけどな。
何とかなるだろ」
「………いい加減」
「性分だ」
顔を見合わせて、二人で笑った。
運命に翻弄され、それまでとはまったく異なる境遇の中で生きてきた幼なじみ。
それでもこうして話していると、幼いころからの思い出と、感情が鮮やかに甦ってくる。
お互いにやはりかけがえのない存在なのだと。
言葉に出さずに確信していた。
「よ〜し。じゃあ、もう休め。譲が部屋でやきもきしながら待ってるぞ」
「うん。ありがとう」
まだ赤さが残る瞳で精一杯笑うと、望美は背を向けて歩き出した。
緊張が解けたのか、少しふらついている。
ため息をつくと、将臣は後ろからいきなり望美を抱き上げた。
「!? ま?!!」
「特別サービスだ。部屋まで送ってやるよ」
「ちょ、ちょっと、恥ずかしいよ〜」
「な〜にを今さら。ちゃんとつかまってろよ。まあ、譲にはイヤな顔されるだろうが」
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