花びらの中で1

 

花びらが…散っている。

ひらひらと、天からの贈り物のように……。

季節はずれの雪のように…。

君と約束したのに……どうやら、一緒に桜を見ることはできないようだ…。

君はまた怒るだろうか。

それとも、すねるだろうか。

せめてこの花びらが、君の良き日を寿ぐよう……。

君の笑顔を飾るよう……。



春が廻り来るたびに、うす桃色の雪片は俺の想いを伝えるだろう。

君の歩みをそっと見守りたい。

肩に、頬に、髪に触れたい…。

柔らかな花びらで、君の心を包みたい……。

歳月がどれだけ流れても、想いは変わることなく君にふりそそぐ…。

繰り返し、繰り返し…。



君に言う機会はとうとうなかったな。

…言わなくて、よかったのかもしれないが…。

俺は……君を愛していた。

ずっと……ずっと愛していた。

出逢ってからの日々は決して長くないけれど、君を見つめて、言葉を交わして、微笑みかけられて、涙を浮かべられて……。

その瞳に映ることができて、俺は幸せだった。

その声を聞くことができて、本当に……よかった。


これからも君は、泣いたり、笑ったり、怒ったりしながら、この緑豊かな国を治めていくのだろう。

君が望むとおり、みんなが笑顔でいられる国を造り出すのだろう。



君の…声…。

だんだん遠くなっていくな……。

寒くはないが、まわりがうす桃色の雪景色のように見える。

…こんなに…穏やかに死が訪れるとは思わなかった。

俺の部下たちも……こんなふうに死ねたと思いたい…。


……頬に触れる手は、君のものか…?

穏やかに見つめる瞳は、君なのか…?

いや、きっと夢……。

だが素晴らしい夢だ。

最期に君の微笑みを見られてよかった…。

君の温かな手を感じられてよかった…。

どうか幸せに…。

君を愛している……。

心から……愛して……………。