止まらぬ想い ( 1 / 2 )

 



(手をつなぐくらいはいいだろうか)

(でも、今までここではやったことがないから、いきなりではきっと……)

(じゃあ、肩に手を回す……いや、それじゃ、手をつなぐより馴れ馴れしいか)

一人、校門脇で譲が悶々と悩んでいると、少し高台になった校舎のほうから、元気な声が降ってきた。

「譲く〜〜ん!!」

「せん……望美さん!」

坂を駆け下りた勢いのまま、望美が胸に飛び込んでくる。

譲の悩みなど蹴散らすような迷いのなさで。

「やっと会えた〜〜!!」

ぎゅうっと譲に抱きつく。

「先輩! じゃない、望美さん、い、いいんですか、正門で!」

「え? 駄目?」

きょとんとした表情で、望美が譲を見つめる。

「いえ、お、俺は全然駄目じゃないですけど」

「じゃあOKだよ! 早く行こう!!」

それなりの数のギャラリーはいたのだが、まったく気にせずに望美が歩き出す。

腕を譲の腕にからめて、ほぼ密着状態。

まったく、さっきまでの俺の悩みはいったい何だったのだと、譲はあらためて思った。




お互いにとって忘れられない譲の誕生日の後、何かに呪われたかのように予定が合わず、結局今週末まで丸2週間、顔を見ることすらできなかった。

今日は二人とも一限のみ、譲の部活も休みだったので、望美の大学の前で待ち合わせをしたのだ。




「ちょっと早いですが、お昼にしますか?」

駅への道をたどりながら、譲が尋ねる。

「う〜ん……だったら何か買って譲くんの部屋で食べない?」

「え? あ、そ、そうですね、先輩がそれでいいのなら」

「望美!」

「……望美さんがそれでいいなら……」

誕生日の翌朝、「もう先輩と呼ばない」という約束をさせられたものの、長年馴染んだ呼び方はそう一朝一夕には変えられない。特に動揺すると、100パーセントの確率で呼び方が戻ってしまう。

(部屋……に来てくれるんだ……いや、駄目だ、過度な期待は抱かないようにしなきゃ。でも、キスくらいはいいかな? たぶん、軽くなら……いや、そもそもそういうことをするために下宿したんじゃないって最初に宣言したんだから、先輩が望まない限り手出しは厳禁だ!)

すでに2年半もつきあっているというのに、何かのきっかけですぐに気持ちが高1のころに戻ってしまう。望美に憧れて、ただ見つめ続けていた日々。

気もそぞろな譲をよそに、望美は総菜屋やスーパーの店先でランチの物色に余念がなかった。




「って、先輩、何食分買ってるんですか!」

「え? 駄目?」

(今日はこのリアクションばかりだな)と、心の隅で思いつつ、

「だってこれ、軽く三食分はありますよ」

と、いくつものレジ袋を覗き込んで盛大に溜め息をついた。

「大丈夫! 夜までかかっても全部食べるから!」

「え? どこか出掛けなくていいんですか?」

びっくりして譲が聞き返す。

「うん! 今日は1日譲くんにくっついてるの」

にっこり微笑みながら望美が言った。

「せ……」

「の……?」

しばらくにらめっこが続く。

「望美さんのお望みのままに……」

「うん!」

それにしても多すぎるランチの袋を抱えて、二人は譲のアパートへ向かった。



* * *



腕の中の柔らかさ、温かさに溺れそうになる。

重ねた唇と甘い吐息に、さらさらと流れる髪に、自分の部屋にいることさえ忘れそうになる。

アパートに戻るや否や、どうしても我慢できなくなって、彼女を胸に閉じ込めた。

一瞬驚いたものの、すぐに緊張を解いて背中に手を回してくれた。

お互いがお互いにこれほど飢えていたのだと、口づけを交わしながらあらためて驚く。

貪るような動きがどんどん熱く、深くなり、このまま止められなくなりそうだと思ったとき、彼女のお腹が鳴った。

「ぐ〜〜〜〜〜〜〜〜」

思わず、肩が震える。




「ひどい、譲くん、笑わないでよ!」

真っ赤になった望美が譲の胸を叩いた。

「す、すみません。お腹すいてるのに、キスしちゃって」

「き、キスはいいんだけど」

照れて下を向く望美の肩に手を回し、

「さあ、ランチにしましょう」

と、テーブルの前に座らせる。

「お茶にしますか? それともコーヒー?」

「う〜〜ん…。どれも合うけどどれも合わないような」

ガサガサと袋の中を探りながら、望美が言う。

「和洋中華全部買ってますからね。何から食べますか?」

「これっ!」

うれしそうに点心セットを取り出したのを見て、

「じゃあ、お茶にしましょう」

と、キッチンに入った。