Sweet White Day (1/3)



 「え? まだ帰ってないんですか?」

勝手口で望美の母に煮物を渡しながら、譲は驚いて言った。

「そうなのよ。お友達とどこかに行くとも言ってなかったから、ちょっと心配で。携帯もつながらないのよね」

さーっと音を立てて血が引く気がした。

望美の母のほうが驚く。

「ゆ、譲くん、大丈夫?」

「俺、ちょっと探してきます」




部活が早めに終わったので、母から託された煮物を届けがてら、望美の顔を見るつもりだった。

バイトも部活もしていない望美が、こんな時間まで帰っていないのは一種の異常事態である。

「ん? 譲、どうした?」

「譲、ご飯よ」

兄や母の言葉に、

「先輩がまだ帰ってないって! 俺、探してくる!」

とだけ答えて自転車に飛び乗った。




3月に入って日が長くなったとは言え、6時を過ぎればこの辺の住宅街は真っ暗である。

時折通り過ぎる車のヘッドライトが、ギラギラとアスファルトを照らし出す。

極楽寺駅から高校までの間を、途中の小道も覗きながら走ったが、望美の姿は見当たらなかった。

「…いったい…どこに…」

仕方なく自転車を方向転換して、今度は長谷のほうに走り出す。

その間、携帯で繰り返し呼んでみるが、相変わらず「電波が届かない範囲か、電源を切っている」というアナウンスが流れるだけだった。


* * *


「うわあ、すっかり夜になっちゃった」

店を一歩踏み出して、望美は驚嘆した。

入ったときはまだ薄暮だったのに、すでに日はとっぷりと暮れ、真っ暗な道が左右に伸びている。

「あ〜あ、長居しすぎたな」

店で過ごした時間を思い返し、溜め息をつく。

(あんなに迷うんじゃなかった……)

だが、結果として、目的の物は手に入ったのだ。

「うん! よしとしよう」

持ち前のポジティブシンキングで、意気揚々と夜道を歩き出す。

だが




「キャッ!!」

すれすれのところを通っていくバンに驚かされた。

海岸近くのこの道は、道幅が狭い割に車の往来が激しい。

1本奥まった道を歩けばいいとわかっていても、それがちゃんと自宅までつながっているか、下手すると山に迷い込んでしまうのではないかと言う懸念があった。

「もう! 少しはスピード落としてよね!」

とっくに通り過ぎた車に文句を言いながら、望美は歩き続けた。




そろそろ道を横断しようと足を踏み出したとき、突然角を曲がって大型の車が現れた。

「!?」

一瞬、足がすくむ。

戻るなり渡りきるなりしなければと頭ではわかっているのに、身体が動かなかった。

「危ない!!」

声と同時に、身体がふわっと浮く。

(え…?)




気づくと、大型車のテールライトが遠ざかり、望美はすっぽりと胸の中に包まれていた。

「……大丈夫ですか?! ケガはありませんか?」

頭の上から降ってくる気遣わしげな声。

それはまぎれもなく

「……譲…くん?」

「ええ。どこか痛いところは?」

ブルンブルンと頭を左右に振る。

「…よかった」

やっと、身体に回された腕が離れた。