出雲郷(島根県出雲市)
筑紫を発った天鳥船が降り立ったのは、青龍の眠る地、出雲。
マップで見ると、船は現在の石見銀山の辺りにいて、出雲の領主、若雷の邸は鳥取県の夜見にあります。
出雲郷はその間、現在の出雲大社の場所にある設定です。
常世の国の支配下にある土地とは言え、領主のシャニの善政のおかげで民が穏やかに暮らしている出雲。
この郷でも、柊がチャトランガで勝ったり、七夕と思われる祭りが行われたり、特に忍人さんルートでプレイしていると、ほっとできる最後の場所とも言えます(涙)。
忍人さんのエピソードとしては、まずは新兵の訓練。上左みたいなところかなあ〜。
この出雲郷で容赦なく新兵をしごくのを見て、千尋ちゃんはショックを受けます。
忍人「耐えられないなら、今のうちに去ったほうがいい」
千尋「戦場はもっと、大変だからですか? 苦しい思いをするくらいなら軍を離れたほうがいいって…」
忍人「違う。戦場では本当に命を落とすからだ」
そうして語られる部下への思い。ああ、本当に大好きな場面です。
気多での珊瑚探しの後、ついに開かれる祭。
二人が歩き回った郷の中は上右みたいな感じでしょうか?
下は煌さんからいただいた境内の写真。こんなしっとりした場所もあるようです。
当時をほうふつさせる具体的な写真はこのページの下のほうを見ていただくことにして、出雲大社の説明に入ります。
現在、出雲大社は「平成の大遷宮」の真っ最中(2013年完成予定)。
本殿は建て替えのため上左の写真の奥に見える工事用の仮屋に覆われ、その前に設けられた仮殿(下)にお参りする形となっています(仮殿の写真は煌さんご提供)。
上左の写真の石畳に描かれた3つの円は、00〜01年に発見された、本殿を支えていた柱の出土場所(鎌倉時代のものと考えられています)。
境内の宝物殿の前には、柱の実物大の復元模型が展示されていました。
人間との対比でその巨大さがわかると思います。
有名な話ですが、出雲大社にお参りする際は、普通の神社が「二拝二柏手一拝」なのに対し、「二拝四柏手一拝」。
正面の巨大な注連縄も、普通の神社とは逆に左から右にかけられているそうです。
何もかもが特別なのが、この出雲大社なんですね。
こちらは神楽殿。
本殿や仮殿の注連縄も立派ですが、大きさはここが最大です。
この注連縄に小銭を投げて、うまく刺さるとご利益があるらしい(あいまい)というので、皆さん飛び上がって挑戦していました。
私もやりましたが、他の人が刺した小銭を叩き落としちゃって焦りました(戻したよ〜)。
そもそも出雲大社の成り立ちは、国譲りの神話に由来します。
須佐之男命(スサノオノミコト)の娘、須世理毘売(スセリビメ)を娶り、宝器である生太刀(いくたち)、生弓矢(いくゆみや)と天の詔琴(のりこと)を手にした大国主神(オオクニヌシノカミ)は、葦原中国(あしはらのなかつくに)を建国し、治めていた。
ところが高天原の天照大御神(アマテラスオオミカミ)が、自分の子にこの地を治めさせたいと「国譲り」を迫る。
大国主神の子どもたちを巻き込んだ交渉や争いののち、「立派な宮殿を作って自分を祀るのなら……」という条件で国譲りは行われた。
この「立派な宮殿」が出雲大社で、国を譲られて新たに葦原中国を統治したのが、現在の皇室につながる天孫と言われています。
出雲大社の境内に立つ、大国主神と因幡の白ウサギの像(上左)。
八十人の兄弟の末っ子だった大国主神は、兄たちの従者として大きな袋をかついで気多の岬にやってきた時、ワニに皮をはがされて苦しんでいた白ウサギに出会います。
この神話については、気多をご紹介する際にまた詳しく。
上右は、上記の国譲りの話し合いがもたれたとされている稲佐の浜。
日本中の神様が出雲に集まるという神無月(出雲では神在月と呼ぶ)には、この浜で神々を迎える「神迎神事」が行われます。
ただし旧暦の神無月なので、現在は11月に行われています。間違えないようご注意!
出雲大社の昔の姿は、『遙か3 十六夜記』に出てきた平泉の大社を思い浮かべればわかると思います。
神殿の立派な模型や、『遙か4』の時代の銅剣などを見ることができるのが上左の古代出雲歴史博物館。
出雲大社のすぐ横にあって、ミュージアムグッズも充実しているのでぜひ訪ねてみましょう。
上右は煌さんからご提供いただいた、古代の出雲大社の模型写真。
出雲大社のそばのお店の中で撮ったそうです。博物館は撮影禁止なので、写真が撮りたい方はそのお店を探してみてくださいね!(煌さん、たくさんのお写真提供ありがとうございました!)
では最後に、再び『遙か4』のお祭りの夜に思いを馳せてみます。
岩長姫や柊、風早たちが酒令に興じていたのはこんな建物でしょうか。
そして、忍人さんと千尋ちゃんもこういう建物が並ぶ郷の中を一緒に歩いたのでしょう。
ぶどうの甘葛煮(あまづらに)に、ハマグリの醤煮(ひしおに)を白餅に挟んだもの、それに、冷たい一夜酒……
「お、おい! まだ何か食べるのか? ……とんでもないことになったな……」
と、困惑する忍人さんがかわいかったです。
「笹につるすくらいで願いが叶うとはとうてい思えないが……君のいた世界では叶うのかもしれないな」
七夕の習慣のことを聞いて、そうつぶやいた後、
「……俺の……願いは……」
と思いを巡らせる忍人さん。
一瞬、破魂刀を手にした日の記憶が頭をかすめます。
本当に短い、儚い心のふれあいだからこそ忘れられない。
このシーン、頭の中では完全にアフレコしていました。
あらためて声のないシーンが多すぎるな、『遙か4』。
千尋ちゃんにとってこの夜が、いい思い出となっていますように……。
写真の建物は、出雲で泊った旅館の宴会場兼「縄文・弥生時代体験スポット」です。
私たちは普通の部屋でご飯を食べましたが、こんなところで宴会をするのも楽しそう。
絵描きさんたちの資料になれば幸いです。