セカンドキス ( 2 / 2 )
「……はあ」
「だ、駄目かな?」
焦った顔がとてもかわいい。
「いえ、おつきあいさせていただきます」
俺も生真面目に返事をした。
「お、お願いします」
先輩はなぜか頭を下げた。
ところが、いざとなったら照れたのか、なかなか顔を上げてくれない。
「…先輩?」
気づくと耳まで赤くなっている。
「…やめておきますか?」
ちょっと残念だが、その感情が声に乗らないよう気をつけた。
ブンブンと頭が左右に振られる。
嫌というわけでもないらしい。
「…じゃあ、目を閉じてください」
「?」
「閉じましたか?」
コクンと頭が縦に振られたので、俺はそっと先輩の頤に指をかけ、静かに上を向かせた。
顔は相変わらず真っ赤で、長い睫毛が震えている。
空いてるほうの手を背中に回し、静かに抱き寄せる。
そして、今度は優しく、啄むように唇を重ねた。
先輩の表情が明らかに和らぐ。
どうやらさっきはかなり苦しかったらしい。
俺は心の中で猛省した。
ゆっくりと、軽く食んだり、吸ったりしながら花びらのような唇を味わう。
触れ合う時間が徐々に長くなってきても、先輩が苦しがることはなかった。
(…コツがつかめたみたいですね)
俺は心の中で呟いて、少し強く唇を押し付けた。
「…ん……」
と、甘い吐息が洩れる。
うなじに差し入れた手で髪を撫で、今度は耳元に口づけた。
「…譲…くん…」
先輩がうっとりした声で俺を呼ぶ。
「はい…」
「やっぱり…上手…」
「………」
それ以上面倒なことを言われる前に、もう一度唇を重ねた。
* * *
結局、一度も先輩からSOSが出ることはなく、長い長いキスは終わった。
何だかお互いにぐったり疲れて、寄り掛かりあいながらしばらく座っていた。
「……どうしよう…」
先輩がポツンとつぶやく。
「…え?」
「私……路チューとかしてる人軽蔑してたんだけど、何か気持ちがわかるようになっちゃった」
あまりにストレートなコメントに、俺は言葉をなくす。
先輩はひとりで赤くなって、
「あの……譲くん……また、ときどき…してね…」
と小さな声で言った。
「駄目です」
意外な言葉に先輩が顔を上げる。
その唇をもう一度ふさいだ。
「…!」
「ときどきじゃ駄目です」
半分唇が触れ合ったままで、俺は囁く。
「譲くん」
「毎日……」
啄むようなキス。
「朝も夜も…」
もう少し深く。
「…う…ん…」
最後は溜め息だったのか、返事だったのか、はっきりしなかったけど。
* * *
満月に照らされて、俺たちの姿が丸見えだったことは、翌日ヒノエに教えられた…。
|