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オリヴィエさまのお誕生日 ( 2 / 3 )

 



第2幕 パーティー当日
Scene 6

「やっほー☆ みんないらっしゃ~い。全員そろってるようだね。
感心感心」


「オリヴィエ、これはどういうことなのだ。
そなたが届けたこの衣装だが」

「ジュリアス、こんなとこで話すのはよそうよ。
さあみんな入って入って」


「ゲッ、屋敷の中がいつも以上に派手になってやがる」


「今日はパーティですからね、ゼフェル。
確かに……華やかですが」

「趣味わりーって言っちまえよ、リュミエール」

「わたくしはそんな…」




Scene 7

「あれ?」

「どうしたんだい、マルセル」

「ううん…気のせいかもしれないけど……。
ねえ、ランディ、このお部屋の鍵って、あんなに頑丈だったっけ」

「さあ、俺は覚えてないなあ。でも確かに簡単には開きそうにないね。
俺たちを逃がさないつもりだったりして。アハハ!」


「アハハ…って、ランディ、笑い事じゃないよ。
僕、やっぱり嫌な予感がするなあ…」





Scene 8・闇

「あ~、それで、この衣装についてはご説明いただけるんでしょうねえ」

「まったくお前は何を考えてるんだ。これは俺たちの執務服じゃないか。
それも今着ているものと寸分違わないデザインときている。
これのどこが仮装だと言うんだ」


「オスカー、今日はオリヴィエの誕生日なのですから」

「お前だって知りたいだろう、リュミエール」

「はあ…」


「そう☆ あんたたちの執務服だよ。
女装やビラビラじゃないってことはよ~くわかってくれたよね。
で、これを着ることに異存はないね?」

「そうですねえ。
光を当てるとスケスケになってしまう素材というわけでもなさそうですし」


「ルヴァ、おめーそこまで調べたのかよ」

「いえ、単に興味がありまして」

「そうだな。これを着ろと言うのなら、異存のあろうはずもない。
だが…」


「は~いそこまで☆ 
ジュリアスがいいと言ったんだからみんなもOKだね。
じゃ、早速着替えてもらおうか」

「待て、オリヴィエ。ジュリアスさまの言葉を最後まで聞かないか」

「よい、オスカー。大したことではないのだ。
ただ、私には少し丈が短いように感じたのでな」

「俺もです。はっきり言って、俺にはこの衣装は小さすぎる。
もっと細いやつじゃないととても着られないぜ」


「ふふふふふふふ☆」

「……そういうことか…」

「クラヴィスさま?」



「だ~れがあんたが着るって言ったんだい? オスカー」

「何っ!?」

「その衣装を着るのはリュミちゃん。ちゃんと渡してあげてよ」

「ええっ!?」


「何だとっ!?」

「はいは~い、落ち着いて。
今から私が誰が誰の服を着るか発表するから、持ってきた服を交換するんだよ。
サイズもそれに合わせて作ってあるんだからね。
おやゼフェル、扉にはぜ~んぶ鍵がかかってるから逃げようとしても無駄だよ。
まずねえ、ジュリアス、あんたの服は私ととっかえっこ」

「なにい?!!!!」

「わ、私にそなたの服を着ろというのか」

「いけません、ジュリアスさま! 
オリヴィエ、俺が代わりに着るから、ジュリアスさまには俺が着るはずの衣装を! 
サイズはほとんど変わらんはずだ」


「オスカー、そなた」

「ジュリアスさま、オリヴィエの衣装さえパスできれば、最悪の事態は避けられます。
ジュリアスさまにあんな…生足が見えるような衣装など…」

「すまぬな、オスカー」

「俺はいいんですっっっっ!!」

「あ~らこの人泣いてるわよ。失礼ね~。
じゃあジュリアスにはマルセルの衣装ね」


「!!!」「!!!」

「な、生足よりはよいか…」

「ご辛抱を! ジュリアスさま!!」




Scene 9闇・

「…意外と似合うものだな、リュミエール」

「クラヴィスさま、お戯れを。わたくしはこのように好戦的な格好は…」

「なんだリュミエール! いつでも代わってやるぞ!」

「あ、オスカー。怖い」

「なにい?!!」

「…化粧でもしたほうが、まだ釣り合うのではないか」

「俺にだって守りたい一線はあります、クラヴィスさま。
生足同士仲良くしましょう!」


「…フッ…。裸にでもなったような気分だな」

「それは…。ゼフェルの衣装は活動的ですから」

「まったく。
普段ほとんど肌を見せない方がそうむき出しにしていると、目の遣り場に困りますね」


「…何を考えている」




Scene 10

「ルヴァさま! 
アンジェたちがいっしょに写真に写ってほしいそうです。
さっきからモテモテですね」


「あ~、困りましたねえ。
マルセル、あなただけつきあってあげればいいんじゃないですか~」

「みんなランディの格好のルヴァさまと写りたいんですよ! 
10年は若く見えるってほめてましたよ」


「私の普段の衣装はそんなに老けて見えるんでしょうかねえ」

「いいえ! 僕、このお洋服大好きです。緑色で、ふんわりと温かくて」

「ありがとうございます。それは私の故郷の…」

「ルヴァ! てめー何してるんだよ! 
こっちは衣装のせいで歩きにくいんだからな。さっさと来いよ」


「ゼフェル、リュミエールさまの衣装なんてまだ歩きやすいほうだよ。
俺なんかマントで窒息しそうだ」

「あ~大変そうですねえ、ランディ。
クラヴィスの衣装は結構重いですから。
あっ! ゼフェル、大丈夫ですか」


「くそー、いつもの歩幅で歩くと裾が突っ張っちまって。
ああ、腹が立つ!」


「あ~ら☆ 何ならスリット入れてあげようか?」

「オリヴィエ、てめえ!
……って……それって……ジュリアスの服か? 
本当に?」


「さっき本人に見せたら泡吹いてたけどね。
このぐらいアレンジすれば、ジュリアスの服もまあまあいけてるって感じになるよね」


「あ~、やっぱり脚を出してこそのオリヴィエですねえ」

「な、何か僕、目がハレーション起こしててよく見えない。
金色のバングルとアンクレットとベルトと…」


「あ~ん、マルセルちゃん、売りはこの黄金のティアラ。
しっかり見てちょうだい☆」


「おめー、普段の執務服はそれでも抑え目にしてたんだな。
よくわかったぜ」


「あ、オスカーさまが真っ青な顔して見てる」




Scene 11闇・

「…いつまで物陰にこもっているつもりだ」

「その格好で歩き回れるそなたの神経のほうが理解できぬ」

「…別に。女王候補たちも怖がって近寄ってはこぬしな。
お前も似たようなものだろう」

「私は人に笑われるのは我慢ならぬのだ」

「…自分で思っているほど滑稽ではないぞ」

「何?!」

「…マルセルと同じ金の髪だしな。
あれが育ったと思えば……………………」

「クラヴィス! 笑うくらいならフォローなどするな!」

「あ、クラヴィスさま! あちらにお茶が入りました!」

「…リュミエールか」

「ジュリアスさまも、どうぞこちらに!」

「!……………………………」

「あの…お笑いいただいても構いませんが」

「!!!……………………………」

「ジ、ジュリアスさま、お顔が真っ赤に…!」


「…我慢のしすぎは体に悪いぞ」

「!!!!…………………………………………………………!」

「あっ!! ジュリアスさま!! 
ルヴァ!! ジュリアスさまが倒れられた! 
オリヴィエ、医者を呼べ!」


「…強情なことだ」

「ご立派でいらっしゃいますね…」




 
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