眠れぬ夜には ( 2 / 2 )
朝の光が瞼を通して差し込んで来る。
穏やかな目覚め。
(よく寝たな…どのくらいぶりだろう)
久々に晴れ晴れとした気分で目を開くと、すぐ横に頭があった。
「?!!!」
頭の主はスヤスヤと寝息をたてている。
少し離れて手をつないでいたはずが、いつの間にか両腕を譲の腕にからめ、ぴったり寄り添っていた。
(ど、どうして?! いつの間に…?!)
一瞬パニックに襲われる。
しかしやがて、その姿勢が
「絶対に譲くんの手を離さない」
という望美の決意の現れであることがわかってきた。
(そんな…寝にくかったでしょうに…)
自分の腕をしっかりと抱えたまま眠る姿を、泣きたいような気持ちで見つめて、譲はもう一度静かに身体を横たえた。
夜明けの空は、まだ薄暗くほの白い。
青空が広がるまで、あと少し。
「先輩がくれたこのすがすがしい朝を、俺も楽しむことにします」
一心に眠る頭に軽く唇を触れると、かすかな声でそうささやいた。
* * *
「白龍、まだだめよ」
朔が小声でささやいた。
「なぜ? 今日は遅く起きるの?」
「いいから、もう少し眠ったふりしていて!」
譲に悟られないように、白龍の袖をひいて身体を倒させる。
「オレはそろそろ邪魔してもいいと思うんだけど」
面白くないという顔でヒノエがつぶやく。
「君は昼夜関係なく口説けるんですから、今くらい我慢してはどうですか」
笑みを含んだ弁慶の声。
「あんたがそれを言うかよ!」
身体を起こして反論しようとするヒノエを敦盛が押さえ込んだ。
「まだだ。神子ももう少し眠りたいはずだ」
「いたたた、敦盛、俺を殺す気か」
「そうだな。今日くらいはゆっくりしてもいいだろう」
リズヴァーンの低い声が続く。
「何で今日に限って皆起きないんだ?」
さっぱり状況がつかめない九郎に、景時が明るく答える。
「お天気はいいし、風も気持ちいいし、こんな日は昼まで寝ててもいいからだよ」
九郎と白龍以外は、あえて木の影で眠る二人を見ないようにしながら、狸寝入りは望美が目覚めるまで続いた。
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