2011/5/28
『らん-2011 New version!!-』前楽昼の部

29日まで吉祥寺・前進座で上演されていた、秦組『らん-2011 New version!!-』を、28日に観劇しました。
根本正勝くんのキャスト表での名前は4番目(男性キャストで1番目は中村誠治郎くん)。
「う~む、中堅どころの役なのかなあ」
と、肩の力を抜き気味に行ったのですが…………


…………あれ?
終演後、席を立ちながら一緒に見たKa女史に確認。
「あの……ファンの欲目からくる勘違いで、そう感じるのは私だけかもしれないけど、根本くんの役、一番おいしくなかった……?」
「うん、一番おいしかったよ!」
「やっぱりそうか~!!!」ヽ(⌒∇⌒ )ノヽ( ⌒∇⌒)ノ♪
大喜びでパンフと生写真大人買い!←


ということで、根本くんの役がとってもおいしかった(←ここ重要)『らん』のあらすじと感想をご紹介します。
激しくネタばれしていますので、ご注意ください。


舞台は日本。
干ばつのため不作が続く村は、領主葛城の殿様と言っていたので、奈良?)からの過酷な年貢の取り立てに苦しんでいた。
村人の一人、正太郎(誠治郎くん)は、村長の息子の許婚に手を出したため、村の占い師のお告げにあった「村を救う赤い花」を取りに行くよう命じられる。

一方、汚染された水が流れ、どの村にも住むことを許されない民が集う赤谷では、少女らんが幼なじみのイタチ(根本くん)に、毎日のように自分を10年前に救ってくれた憧れのヒーロー、正太郎の話を語り聞かせていた。
らんが好きでたまらないイタチは、そんな10年前に会った男より自分を選べと、必死で訴えるが耳を貸してもらえない。

赤谷に迷い込んだ正太郎はらんと再会、胸に赤い花のあざがある彼女を「村を救う救世主」だと信じて、赤谷の仲間とともに村に来るよう説得する。
初恋のヒーローと会えて舞い上がるらん。ところが、正太郎は村の若い娘に片っ端から手を出す困った男だった……。



誠治郎くんがプレイボーイ役~!?
って、かなり驚いたんですが、「誰とのつきあいもすべて恋愛!」と言い切る天然なタイプだったので、ちょっと納得。
一方の根本くんは、臆病で用心深く、「卑怯のチャンピオン」を自認する小心者なんですが、いや、きれいすぎて(笑)。
いくら初恋の人がいるからって、このイケメン完全無視って、それじゃあまるで神子だよ、らんちゃん
は! そういえばこの子の設定、ほとんど神子だわ!


赤谷の人々の加勢で領主を城から追い出した村人たち。
が、状況が好転すると、途端に彼らに約束した村の土地と家屋を渡すのが惜しくなり、米俵ひとつで村から放り出す。
そこに領主の軍が来襲。
またも赤谷の人々を呼び戻して、何とか撃退する。

さすがに赤谷の人々は、もはや村人を信じない。
報奨だけもらって谷に帰ろうとするのを、「祝宴を開くから」とひきとめられ、仕方なく酒を飲む。
その宴を抜け出して、らんに再度気持ちを確認するイタチ
「俺はいつも自分のことばっかり言っていて、お前は自分の本当の気持ちを半分も口に出さないから、今日はいつもと逆のことをやろう。俺を正太郎だと思って、本当に伝えたいことを言え」
切々と想いを語るらんに傷つけられながら、懐から百合の花を出すイタチ「正太郎からの花だ」と言って。


そこに、領主と内通して赤谷の人間を抹殺することを決めた村人たちが襲いかかってくる。
あまりのことに愕然とするイタチ
「俺は卑怯のチャンピオンだと思っていたが、本当の卑怯ってのは全然違うんだな!」
酒に酔い、武器も持たないらんをかばって一人戦う。
いつまでも百合の花を離さない彼女に
「そんなもの正太郎の花でも何でもない! 捨てろ」
と言うと、
「いやだ! だってこれはイタチが私のためにくれた花だから」
という答えが。
めった刺しにされながらもらんの無事を確認し、仲間の到着とともに息絶えるイタチ



泣いた。泣いた。号泣しました。
だって属性が譲くんなんだもん!!!
確かに戦いの際も物陰に隠れたり、だまし討ちしたりと、いろいろ卑怯さが表現されているイタチですが、そんなもん全部ぶっとばすくらい健気で切なくて素敵だった~!!
傷ついた顔をさせたら右に出るものはいないぜ、根本くん!!
らんも最後はその気持ちに応えてくれて、あああ、いい話じゃないか~!!!!

え~、ストーリーはこの後も続くのですが、私の中ではここでほぼ終わっちゃいましたね。
すみません。


物欲や家族への過剰な思いなどが引き金となって、味方が敵に、敵が味方にどんどん変わり、憎み合い、殺し合い、最後に権力者だけが生き延びる……という物語の構図は、学生運動を経験した団塊世代っぽいなあと思ったのですが、開幕前にあいさつされた脚本・演出の方はそれほど年長にも見えないし……と思っていたら、パンフにつかこうへいさんの弟子だとありました。
なるほど、つかさんはこういうテーマをよく書かれましたからね。

村人にも、赤谷の人々にも、領主側にもそれぞれの理屈と正義があることが描かれていたので、最近多い「正義と悪」が記号化されたお芝居とはひと味違いました。
まあ、結末はとっても悲惨なのですが。


とにかく根本くんがすごく素敵なお芝居でした。
いいものを見た……!
パンフに載っていた「自分の役以外で演じたい役は?」という質問に、誠治郎くん
「イタチ!! 絶対イタチ!! 友達に一番なりたいタイプだし、あの一途さは最高です!! しかも双剣かっこいい!!(以下略)」
と、興奮気味に答えていたのがかわいかったです。