2010/10/17
舞台 『ストラルドブラグ』千秋楽

根本正勝さん出演の『ストラルドブラグ』千秋楽に行ってきました。
今回しみじみと思ったのは、演劇というライブ公演の難しさ。

後ろの席にですね、小さいお子様3人を連れたお母様がいらしたのです。
どうやら出演しているダンサーさんのお知り合いらしいのですが、まず、劇の内容がお子様たちには難しすぎる。
そして、お母様もダンサーさんの出番以外(劇の本筋)にはご興味がない。
ので、劇の間中、お子さんたちが何度もトイレに行ったり親子でおしゃべりしたり、椅子を揺らしたり。
マジに辛かった……orz。

内容にもよりますが、やはり入場の年齢制限してほしいなあと。
お互い不幸ですよ、こんな観劇。


ここまでは運に左右される部分なのですが、もっと普遍的なことを。

演劇にはクローズアップがない!
もちろん、スポットが当たる、当たらないといった演出はできるのですが、基本的に舞台の上に全身が見えているロングの構図に固定されています。

それゆえに、背の高さってものすごく重要なんです。
『遙か』の舞台版で感動したのは、八葉たちの背の関係がほぼ原作通りだったこと。
あの背の高さの関係って、そのまま人間関係にも反映されているので、ファンにはとても重要なんですよね。


で、今回のお芝居。
背の高さのバランスが悪すぎる!!
劇中で守られる女性と少年がでかいんだわ。
彼らを守ろうとする最強の戦士と同じくらい背がある!!
根本くんも、副官の人がでかすぎてものすごく小柄に見える!

この辺はキャスティングのときにもうちょっと気をつけてもいいんじゃないだろうか?
そういった見た目の違和感をねじ伏せるほど演技力があれば(根本くんの将軍役はそれができていましたが)、逆に面白い味わいも出るのでしょうが、今回はそれができているとは言い難い。
「なんであんなでっかい人たちをキャスティングしちゃったんだろう? 事務所の力関係?」
とか、余計なことを考えてしまいました。


さて、ではやっとお芝居の本筋にふれることにします。
あらすじは公式サイトからコピペ。

先の大戦が終結し平穏が訪れた時代…。
仕事に疑問を持った女性カメラマンのセレスは 報道局を辞め、いまだテロが連鎖する戦場へと旅立つ。
そこで出会ったのは、巨大な盾を担ぎ屈強な肉体を持ちながらも 争いから逃れ、死の恐怖に怯えるガープ
そして恐怖や哀しみといった負の感情をいっさい持たない 次期法王と呼ばれる神の子ホルス…。
家族のような絆で結ばれてゆく三人。
だが、法王庁の不死の兵団『ストラルドブラグ』が 彼らを不気味に包囲してゆく…。


このセレスホルスの背がガープとタメなんです。
きついでしょ?(笑)

大戦の後、周辺国を絡め取りながら勢力を広げる法王庁と、存在意義を失いかけている軍隊、それに法王庁支配へ抵抗を続けるゲリラ部隊

法王庁は、法王を背後から操る薬師、メティスが事実上の支配者で、彼は不死の兵団『ストラルドブラグ』を作り上げようとしています。

一方、軍隊を率いるプルート将軍(根本くん)は、ガープのかつての戦友で、御前試合で一騎打ちした際、片腕を失っています。彼の部下たちは、ガープが軍を脱走した際、置き去りにされたという思いを抱えていました。

法王庁とゲリラ部隊の戦闘に介入し、ゲリラ側に助力したガープセレスは、紆余曲折を経て彼らとともにメティスを倒すことに。法王庁の腐敗を目の当たりにしたプルートもそれに加わります。
戦闘の中で明らかになった事実―ガープが死を恐れて逃亡したのは、自身が「不死の兵」となる投薬を受けており、命を落とすと最強のストラルドブラグになってしまうため。

ようやく、周辺が彼の苦しみを理解したものの、終わりのないストラルドブラグとの戦いの中、仲間たちは次々と倒れていきます。そして……。


と、かなりドラマチックなお話なのですが、う~む、やはりこれだけ現実離れした舞台設定だと、お芝居に入り込むのがかなり大変です。
かつ、演出・脚本・音楽ともゲーム関連の方がやっていらっしゃるため、すごくゲームっぽいんですよね。
一つの台詞をきっかけに、いきなり大音量で悲しい音楽が流れ出したり、結構重要な心の交流の台詞にボーカル入りの音楽がかぶったり。

ゲームだったら字幕も出るから多少台詞が聞こえにくくても大丈夫なんですが、舞台はね~。
もっと役者さんの台詞を大切にして、台詞の力で場面を展開させていくほうが生身の人間が演じる意味があると思うのですが。

たとえば悪役でも、その中に多面性を持たせたり、迷いを感じさせたりすることで人間像を膨らませることはできます。
人間は記号ではないのだから、もっと息遣いを感じられる人物造形をしてほしかったなあ。


その点、根本くんはかなり頑張っていました。
プルート将軍、複雑な内面性を感じられましたから。
たとえば一つの台詞でも、一つの表情で終わらせない。
前半と後半で込める感情が異なる……みたいな表現が見事です。

『バトラーvs.バトラー』にしても、『ダルマ』にしても、根本くんより演技がうまい人がいない……という舞台への出演は、得るものが少ないんじゃないかなあと心配になります。
もっともっといろいろな演技ができる人と出会って、糧にしていってほしいなあ。


今日は千秋楽ということで、主題歌の歌手の方が生で歌われたり、キャスト一人ひとりの挨拶があったりと、終演後のイベントが盛りだくさんでした。
涙を見せる出演者の方も何人かいらしたりして、特に殺陣の部分はかなり苦労した(そして殺陣の部分の完成度は高かった)ようなので、ケガなく終えられて感無量だったのだと思います。

でも、演劇としてはまだまだ改良の余地がある出来だったと思います。
その事実を受け止めて、次回に生かしていただければと心から思います。
出演者・スタッフの熱い思いはとても伝わってくる舞台だったので。