スチールトーク1

 

「空が広いなあ」

「気持ちいいよね。譲君、昼寝しちゃったら? 起こしてあげるよ」

「そんな、先輩といられる貴重な時間に寝るなんて」

「無理しないの。昨日徹夜で勉強してたって将臣君から聞いたよ」

「…余計な情報を」

「私、適当なことしゃべってるから、目だけ閉じてたら? 眠たくなったら寝ちゃっていいよ」

「先輩……」

「それに私、譲君の寝顔見るの大好き」

「な…! って、俺そんなに寝てるところ見られてますか?(先輩の寝顔ならさんざん見たけど)」

「勝浦の宿で…って、あ、しまった、これ内緒だった」




「勝浦…? ……まさか、あの昼寝のとき?」

「ごめんごめん。ちゃんと眠れているか心配だったんで覗いちゃった」

「それはいいんですが……先輩、そういえばあのとき何かごまかしてましたね」

「え…」

「起きてたの?とか……あれは……」

「き、気にしないでよ、そんな昔のこと」

「気になりますよ! 顔に落書きでもしてたんですか?」

「そんな、将臣君じゃあるまいし」

「じゃあ…?」

「ち、ちょっとそんなドアップで迫らないで」

「知りたい」

「そんなたいしたことじゃないよ~!」

「教えてください」




「わ、わかりました~! あのね、覗きに行ったら譲君がうなされてたんで、安心させようと思って」

「思って?」

「……手を握ったの。声かけながら」

「………」

「怒った?」

「いいえ……というより」

「何?」

「期待しすぎました」

「え~? 何を?」

「い、いえ、いいんです。気にしないでください」

「するよ~! っていうか、今度は譲君がごまかしてる~!」

「寝ます」

「ずるい~!!」




(そうだよなあ…先輩にそれ以上を望むのは無理だよなあ…と、ひとり赤くなる譲であった…)







 

 
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