部屋割り大作戦 ( 1 / 2 )

 



「同じ四神同士を同室にすればいいんじゃないのか?」

天真の提案に、

「ええっ!?」

と、素っ頓狂な声を上げたのは景時だった。




南斗宮で過ごす一晩目。

さすがに全員が個室というわけにはいかず、部屋割りが問題になっていた。

「私は別にかまわないよ」

「私もね」

友雅と翡翠のコメントに、景時の顔色がさらに青くなる。




「そうすると八部屋ですか。
神子ど……あかね殿は当然一室使われますから、部屋数が少し足りないですね」

手描きの図面を見ながら、鷹通が言った。

もちろん、南斗宮には有り余るほど部屋があるが、協議しやすく、防備も固めやすいよう、一つの棟の同じ階に集まる前提で話しているのである。

「それなりに大きい部屋もありますから、すべて三人で使うのはもったいないでしょう」

景時のほうをさりげなく見ながら、幸鷹が助け舟を出す。

「じゃあ、現代組は一部屋ってのはどうだ? 全部で五人で、ちょうどいいだろ」

将臣の提案に、全員がいっせいに幸鷹を見た。

「……私は別に……。問題ありませんよ」

「んじゃ、五人抜けってことで」

将臣がそう言うと、鷹通は結論を紙に書き止める。




「では、武士も一部屋に集まってはどうだろう、頼久殿、頼忠殿」

今度は九郎が口を開いた。

「私はもちろん、構いません」

「むしろありがたく」

二人とも律儀に頭を下げる。

「あ〜〜っ!! 俺、武士! 武士だよね、九郎!!」

景時が片手を大きく上げて飛び上がりながら言った。

「当たり前だ。おまえは軍奉行だろう」

「では、僕もその部屋……ということになりますね、九郎」

弁慶の言葉に、九郎は大きくうなずく。




「私も……加えていただいていいだろうか」

控えめに言ったのは敦盛。

「平家の公達なら、当然武士でしょう」

幸鷹が、何を今さらという顔で答える。

「敦盛はなんか優雅だから、永泉や泉水の仲間のような気がしちまうんだよな」

イノリのストレートな表現に、「違いねーや」と、天真もうなずいた。




「先生! 先生も、こちらの部屋にぜひいらしてください!」

九郎が真剣に懇願すると、しばらく沈黙した後

「……よかろう」と、リズヴァーンは答えた。




「この部屋が、一番大人数になりそうですね。全部で七人……。
中央の大きい部屋をあてるようにいたしましょう」

図面を参照しながら、鷹通が言う。




「では、次は『宮仕え』などというくくりにしてみてはいかがかな?」

友雅の提案に、永泉と泉水が顔を見合わせた。

「あの……わたくしは一介の僧侶の身、そのお仲間からは外していただいたほうがよろしいかと思います」

永泉がおどおどと言うと、

「永泉様、そのようにお気遣いなさる必要は……」

と、泉水がなだめる。

その様子を見て、

「友雅殿、むしろ『殿上人』というくくりのほうがよろしいのではないですか?」

と、鷹通が提案した。

「駄目だよ。それでは君が別の部屋になってしまうだろう」

「特に問題はないと思いますが」

「私がつまらないのだよ」

「あ〜、いっそ鷹通は俺と『地下人』のくくりにでも入るか?」

明るく提案する勝真を、友雅がじろりと睨みつけた。




「あの……友雅殿の時代の八葉が三人、僕たちの時代の八葉が三人なら、六人ですから問題がないのではないでしょうか」

彰紋が指を折りながら、穏やかに言い添える。

「ん? 六人って、友雅と鷹通と永泉と勝真と彰紋と泉水でいいのか?」

天真も一緒になって指を折っていると、

「「陰陽師も宮仕えだ」」

泰明と泰継がまったく同時に、きっぱりと宣言した。

「「「「「「「あ」」」」」」」」

(一応自覚はあったのだね……)

友雅が天井を仰ぎ見る。




「うーん、さすがに八人は多いですね。
では、陰陽師は陰陽師だけのくくりにしましょうか?」

弁慶がにこやかに言った。

「えっ?」

景時がビクンと飛び上がる。

「べ、弁慶、まさかそこに……」

「もちろん君も入りますよ、景時」

「え〜〜〜〜〜っ!!??」




「あとは、残った翡翠殿、ヒノエ殿とイノリ、イサトが同室ということになりますが」

鷹通の言葉に

「なんだ、天の朱雀は結局三人とも一緒か」

「オレは構わないぜ」

と、イサトとイノリが口々に答えた。

ヒノエもやれやれというように左右に首を振る。

「翡翠殿、お一人だけそちらでよろしいですか?」

鷹通が少し心配そうに尋ねた。

「……そうだね。ヒノエと海賊談義でもすることにしよう」

「そんなものはしなくて結構です!」

幸鷹がビシリと斬り込む。

「では、女人の口説き方など……」

「「「「「「「もっとしなくていい!!」」」」」」」